今こそ、エンデを
「モモ」「はてしない物語」の作家、ミヒャエル・エンデは、ナチス敗北のまぢか、16歳にして、老いも若きも駆り出される召集令状を破り捨て、疎開先から90キロの道程を歩いて、ミュンヘン郊外の母のもとに落ち着く。召集令状は、なおもそこまで追いかけてきたが、母親はそれをストーブに投げ入れて、戦争はもう終わりだと告げ、生きることの方が問題だと、きっぱりと言う。
敗戦を予感したのだろうか。
エンデは、反ナチス抵抗組織の伝令として走りまわっているうちに敗戦。
エンデの諸作品は、そうした強靭な魂の結晶である。晩年にいくにしたがい、現代のグローバルな資本主義の市場経済の飽食社会の末路を予見するようになる。つまり、終末観が作品に色濃くでるようになる。
彼が理想としていた社会は、法のもとに自由であること、平等であること、相互扶助の社会であることの三つに要約される。それは自然界の摂理に学ぶことによって達せられると。
よって、彼は自然とともに純粋に暮らしている人々の心を愛した。その想いの帰結として、彼は、信濃町の黒姫童話館に、自分の作品の生原稿、書簡、少年時代に落第したときの通知表にいたるまで、その殆どをここに収めることを承知した。400万人都市の故郷ミュンヘンではなく、人口8500人のこの小さな町に。約2000点の資料のなかに、「モモ」の初稿もある。
称名寺の「石の鐘」を見たら、それらの展示のある黒姫童話館へ行こう!
(想)
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林 (月曜日, 10 8月 2020 01:05)
駒ヶ根