長野市豊野町生まれです。現在は金沢大学に通っています。今回、憲法かえるのやだネット長野さんが街頭活動を行うとのことで、メッセージを送らせていただきます。現在、私は全国的に広がっている学生支援を求める署名活動を金沢大学で行っています。また高等教育無償化プロジェクトFREEにも参加しており、そちらでも活動をしています。長野では、昨年の災害以降、ボランティア団体N-FiRSTに参加してボランティア活動に参加しています。
今回、僕は現行の憲法でも十分に保障されていない、平等な教育を受けるという権利について述べさせていただきます。そもそも日本国憲法第26条によって教育の権利は保障されています。また日本国憲法第14条よって平等権も保障されています。
しかし、現実では経済的理由によって大学に進学できない人や大学に進学しても経済的理由で退学をせざるをえない人がいます。毎年10,000人の学生が経済的な理由で大学を退学しています。最近では新型コロナウィルス感染症による学生生活への影響が様々なメディアで報道されています。例えば、アルバイト収入によって学費や生活費を賄っていた学生が、このコロナ騒ぎによってアルバイトがなくなり、生活ができなくなり、大学を辞めざるを得ないなどといったことです。4月に発表されたFREEの調査では、5人に1人の学生が大学を辞めることを検討していると回答しました。このような現状が生まれているなかで、果たして教育の機会均等が保障されていると言えるのでしょうか?
そもそもこの問題は今に始まったことではなく、従来からあった問題です。それがこの全国的な疫病災害である新型コロナウィルス感染症の感染拡大によって顕在化したに過ぎないのです。これまでの制度においても、災害によって学びをあきらめざるを得ないと言う学生が生まれる可能性が十分にありました。従来の支援制度では、家屋災害に限定した支援のみが行われており、今回のように間接的な経済被害に関しては支援されていませんでした。つまり災害によって学びの権利が簡単に失われてしまう状況が今までもあったのです。
このように簡単に学ぶ権利が失われてしまうのは教育が商品であるからに他なりません。多くの人々にとって、もちろん僕自身にとっても、小学生の頃から教育に関する費用を支払うことで教育に対する消費者マインドが身に付いてしまっていると考えています。お金を払った対価としての教育、果たしてそれは権利であると言えるのでしょうか?お金を払えなければ教育を受けられない、これはお金を払えないから車を買えないといったような、購買行動となんら変わりありません。このことは、大学などの高等教育機関に限らず、高校や中学校、小学校にも言えることです。一例として修学旅行があります。修学旅行は学習が目的とされている一方で、それにかかる費用は各家庭が負担しています。特に小・中学校は義務教育過程であり、教育費はかからないとされているのに、修学旅行のためにお金を支払わなければならないというのは、果たして憲法が規定する義務教育の無償を達成していると言えるのでしょうか。
こういったことを主張すると「教育費は受益者が負担する」と指摘されます。このような指摘をしてくる方は、大抵、教育の受益者は学習者本人であると捉えています。しかし教育の受益者とは果たして学習者本人だけなのでしょうか?学習指導要領に記載されている中央教育審議会答申では、「より良い学校教育を通じてより良い社会を創る」とあります。すなわち、教育の受益者とは学習者本人だけではなく、社会も含まれます。受益者負担の考え方に基づくのであれば、小・中学校の修学旅行にかかる費用やその他給食費など費用、また進学の際の受験料なども社会が負担するべきなのではないでしょうか?受験に限らず、高校・高等教育機関で必要な授業料についても社会が負担するべきではないのでしょうか?
そもそも日本は災害大国です。いつ大きな災害に見舞われるか分かりません。災害によって学びの権利が左右されないようにするためには、教育費は社会が、国が負担する必要があります。日本の教育費のうち、家庭負担が占める割合は6割を超えています。これはOECD諸国の中でもトップレベルで高い比です。日本のように災害が多発する国において、教育費の家庭負担が多いと学びが失われてしまう可能性も高いといえます。災害に備えるという意味においても、教育費の家庭負担をなくし、無償にする事は必要な政策だと僕は考えます。
このような不十分な環境の中で、日本国憲法を改憲するということに僕は強く反対します。現行の憲法下において規定されている権利でさえも保障されていない中で、憲法を変える事はとてもリスキーであり、それこそ萩生田文科大臣が署名活動を行なっている学生に対して言い放った言葉、「順番が違う」と言えます。このような状況下で憲法を変えようと言っている方には「目を覚ましていただいて」、まずは現状抱えている問題を十分にクリアしていくことに集中して欲しいです。